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海芝浦

こんにちは、神奈川県在住のGです!

今回のテーマは「好きな駅」。
私が心酔するエッセイストの、特にお気に入りの一冊で取り上げられていた駅にしようと思います。

それはJR鶴見線の終着点である「海芝浦」。

駅名は元々聞きかじっていたものの、実際に足を踏み入れたことはなかったので、
これを機にこの目で確かめてみることにしました。

幼い頃の記憶とは対照的に、今や小洒落た駅へと成り上がった「鶴見」を出て少し。
窓に切り取られた風景はみるみるうちに様相を変え、そこにはキラキラ光る海面と、煙をもくもくと吐き出す工場群。
対比のような景色をなんとなく眺めながら揺られること数十分。

いざホームに降り立つと、見渡す限りの海。すぐ足元に迫る水面。
街中の慌ただしい空気とのギャップに、しばらくぽつねんと立ち尽くしていました。
ここは京浜工業地帯のど真ん中に位置する無人駅。
東芝の私有地にあり、関係者以外は改札の外へ出られないそう。
さて、帰りの電車が来るまでは30分程。

駅の端には「海芝公園」という細長く伸びた公園があり、ベンチに腰を下ろすことにしました。
ちょうど夕暮れ時。視界の先をまったりと行き交う優雅な船たち。
心地よく耳を刺激するのは、波音と植栽の葉が擦れる音。
京浜運河の向こうには、夕陽に照らされくっきりと浮かび上がった横浜ベイブリッジ。

あっという間に陽が落ちて、冷え切った体を丸めながら電車に乗り込むと、
行きの無機質な様子とは打って変わって、
ぽつぽつと灯りをまとった黒い影が、すっかり工場夜景の様を呈していました。

『死ぬまでに行きたい海』。
著者があの一冊をそう名付けた理由が、ようやくわかったような気がしました。
私の小さな冒険を気持ちよく総括し終わったところで、
さっきの光景が夢だったかのように、都会の喧騒へまた連れ戻されたのでした。

騒がしい雑踏から逃れ、喧しい頭の中を空っぽにしたい時にまたふらっと足を運びたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!