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血は争えない

 

子どもの頃は、とにかく目立つことを避けて日々を過ごしていました。

人前に立つ機会があれば、何日も前からイメトレをこなし、

前日には寝付けず、当日の朝には休む言い訳を考える。

大人になった今でさえ、できれば注目の的になることからは逃れたい。

 

そんな私でも、唯一「歌う」ことに関しては、どういうわけか進んで人前に立てるのでした。

学校でのど自慢大会があれば全校生徒の前でもひるまず歌えたし、

カラオケへ行けば、どんなにアウェーな状況でも掴みの一曲を買って出てしまう。

 

日陰で生きていたい。元々の気質と相反する「歌う」ことへの衝動に、

違和感を抱えながら過ごしていたある日のこと。

 

観るともなく観ていたTVが映し出した光景に頭を殴られたような衝撃を覚えました。

スコールの後で、腰まで浸水しているのにもかかわらず、

自宅でカラオケを楽しむ人たちの様子でした。

それは私が生まれ、乳児期を過ごしたフィリピンの、なんてことない日常でした。

 

思い返せば、この国の家庭では冷蔵庫や洗濯機に並んで、カラオケセットが必要家電として挙がるし、

耳を澄ませば、どこからともなくカラオケを楽しむ人々の歌声が聴こえてくる。

母や親戚も、暇さえあれば何か歌っているし、その血を継ぐ私もやっぱり歌っている。

 

人生の大半を日本で過ごしてきた私は、日本人の父のように、控えめでシャイな人間に育ちました。

フィリピン人の母のように、底抜けに明るく人懐っこい気質は受け継がなかったものの、

「歌う」衝動からはどうしたって逃れられなかったのだと悟りました。

なるほど、血は争えないとはこのことか。

 

ただの生まれだけでは説明しきれない、確かな自分のルーツに気づいた私にとって、

今回のブログテーマである「歌」は、初めてのブログ投稿にぴったりのテーマだったのでした。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。